アメリカと日本では、保護犬に対する取り組みに大きな違いがあります。
アメリカでは、多くのシェルターが積極的に譲渡活動を行い、殺処分ゼロを目指すノーキルシェルター(殺処分0)が普及しています。
一方、日本ではシェルターの数が限られ、資金や人手の不足、地域ごとの取り組みの格差
が課題となっています。
今回はこれらの違いをいろいろなデータに基づいて比較し、それぞれの国が抱える課題を可能性を探りながら、動物福祉の現状に
迫っていきたいと思います。


下の棒グラフは、アメリカと日本における年間の保護犬受け入れ数を比較したものです。アメリカでは毎年約249万頭の犬が保護されているのに対し、日本では約2万2392頭と大きな差があります。
この違いは、人口規模の違いももちろんありますが、ペットの飼育数や譲渡文化、保護活動の体制の成熟度の差に起因しており、日本では今後、支援体制の強化と保護活動のさらなる推進が求められます。また、日本では保護犬に関するデータが十分に収集されていないことから、実際には保護を必要とする犬の数がもっと多い可能性も指摘されています。
年間保護犬受け入れ数

出典: Best Friend Animal Society

出典: 環境省

アメリカと日本の取り組み比較
殺処分数背景
前回お伝えしたように、アメリカでは「No-Kill」シェルターの増加や譲渡活動の強化により、殺処分数は減少傾向にあります。しかし、依然として年間約39万頭の犬が殺処分されています。
この背景には、過剰収容や飼い主の無責任な飼育放棄が影響しており、広大な国土と大規模な保護システムがあっても、すべての犬に新しい飼い主を見つけることができていません。

出典: ASPCA
日本では、保護犬の数はアメリカより少ないものの、年間約2434頭の犬が殺処分されており、保護犬の収容数に対して殺処分の割合が高いという課題があります。シェルターの数が少なく、施設の収容能力や譲渡活動の浸透度が不足していることが影響しています。
また、飼い主の認識不足や不妊・去勢手術の実施率に低さも、殺処分問題を悪化させています。

出典: 環境省
アメリカ | 日本 | |
---|---|---|
ノーキルシェルターが広く普及 | シェルターの普及 | シェルターは小規模で数が少ない |
全国的に譲渡活動が活発 | 譲渡活動 | 譲渡活動の浸透が遅れている |
寄付文化が浸透し、安定した資金調達 | 資金調達 | 寄付文化が未熟で、資金不足 |
教育が行われ、飼い主の意識が高い | 動物保護教育 | 教育の機会が限られ、意識が低い |
動物保護に関する法律が充実 | 法律の整備 | 動物愛護法は整備中だが課題が多い |
民間団体も積極的に支援活動 | 民間団体の役割 | 資金、人手不足で活動が制限されている |

今回、アメリカと日本の保護犬事情や殺処分の違いを調べる中で、両国の取り組みや課題について私自身も改めてより理解することができました。アメリカは殺処分0が広まっていますが、それでも殺処分がゼロになったわけではありません。日本では、シェルターの支援体制が課題ではありますが、動物愛護法の改正により少しずつ良くなっていると感じました。このアーティクルを通して、たとえ小さな一歩でも、譲渡活動の参加や寄付、保護犬への理解を広め、動物福祉について考えるきっかけになってほしいと思います。