保護犬に、医療と、家族を。

動物の愛護及び管理に関する法律の改定

動物の愛護及び管理に関する法律の改定

環境省

1.法律が改訂された背景

ここ数十年のあいだで、私たちと動物の関係性がより密接になり、ペットを飼育する家庭が増加、犬猫を取り扱う市場が急速に拡大しました。それと連動するように、犬猫を劣悪な環境で飼育する一部のブリーダーなどが社会問題となっています。

そこで、令和3年6月1日に「動物の愛護及び管理に関する法律施行規則」の一部が改訂され、飼養設備の規模、従業員の員数、繁殖に関する基準について、段階的に新しい基準が適応されることになりました。

2.飼養設備の規模について

「基準省令第2条第1号及び第3条第1号」では、ケージ等で飼養する犬猫が快適に就寝、休息、運動できるように、適切な規模を確保することが求められています。新たな基準は、以下のふたつの飼養方法が対象となっています。

①運動スペース分離型飼養(ケージ等):就寝・休息スペースと運動スペースを別々に確保
②運動スペース一体型飼養(平飼い等):就寝、休息、運動スペースをまとめて確保

飼養設備の規模について

運動スペース分離型飼養の場合、犬はタテ(体長の2倍以上)×ヨコ(体長の1.5倍以上)×高さ(体高の2倍以上)、猫は体高の3倍以上の高さを確保しなければなりません。棚は1つ以上もうけて、2段以上の構造とすることも必須。また、複数の犬や猫を飼養するときは、頭数から合計の面積を算出し、いちばん体高が高い犬猫を基準とします。

また、運動スペース一体型飼養の場合は、犬は床面積(分離型ケージサイズの6倍以上)×高さ(体高の2倍以上)とすることが決まり。猫は床面積(分離型ケージサイズの2倍以上)×高さ(体高の4倍以上)の確保したうえで、棚を2つ以上もうけて3段以上の構造とする必要があります。

3.動物の飼養と従業員の数について

「基準省令第2条第2号及び第3条第2号」にて、犬猫を飼養する際の従業員の数についても定められています。従業員1人に対して繁殖犬は15頭、販売犬は20頭を超えてはいけません。猫については、繁殖用の猫は25頭、販売用の猫は30頭以内におさめる必要があります。

ここで指定されている頭数は、施設で飼養されている犬猫のみ。犬猫ともに、親と同居している子犬や子猫、繁殖をリタイアした犬猫は、この頭数に含めることはできません。そのため、繁殖用をリタイアした犬や猫は、新たな行き場を見つける必要があります。

4.犬猫を繁殖させる際の注意点

「基準省令第2条第6号及び第3条第6号」では、繁殖のために利用できる回数や、繁殖用の犬や猫の選び方などが定められています。

・生涯出産回数の制限について

犬の生涯出産回数は6回まで、交配させられる年齢は6歳以下と定められました。ただし、7歳になった時点で、出産回数が6回に達していないことが証明できた場合は、例外的に7歳以下まで認められます。

猫が交配できるのは6歳以下とされました。7歳になった時点で、出産回数が10回に達していないことが証明されたら、犬と同じく7歳以下まで認められます。

・繁殖させるときの注意事項

犬や猫を繁殖させるときは、必要に応じて獣医師などの診療あるいは助言を得ることが求められています。また、獣医師資格を持っていない人が帝王切開をすることは禁止。手術したあとは、出生証明書、母犬・母猫の健康診断書を交付してもらうこと。加えて、今後も繁殖させられるかどうかも診断してもらう必要があります。

なお、交付された診断書は、必ず5年間保管することが義務化。その後も繁殖させるときは、獣医師による健康診断、帝王切開の診断、そのほかの診断結果に従って行います。繁殖に適していないという診断が出た場合は、その診断に従わなければなりません。

5.動物を飼養する環境

さらに「基準省令第2条第3号及び第3条第3号」では、犬猫が快適に生活できるように、飼養環境についても詳しく定められています。飼育スペースに温度計と湿度計を設置して、高温や低温により犬猫が体調を崩さないように配慮することが求められています。

そのほか、飼養環境および周辺の環境に対する配慮から、犬猫の飼養スペースを衛生的に保ち、臭気を出さないことが求められています。また、昼夜の長さにあわせて太陽光や照明を適度に取り入れ、飼養スペースの光環境を快適に保つことも、ブリーダー等の義務となります。

6.犬猫を展示・輸送するとき

犬猫をショーケースなどで展示し、飼養施設へ輸送されたあとの対応について定めているのが「基準省令第2条第5号及び第3条第5号」です。

犬や猫を長い時間連続して展示するときは、自由に動き回れる、休息できるスペースを設ける必要があります。そのようなスペースを確保できない事情がある場合は、6時間ごとに展示を取りやめて、犬や猫に休息時間を与えなければなりません。

また、展示の期間が終了し、飼養施設に戻った犬や猫たちには、観察期間をもうけなければなりません。観察期間は輸送してから2日間。下痢や嘔吐の症状がないか、四肢の麻痺や怪我など外見的な異常がないか、目視で観察する必要があります。

7.新しい基準が適応される期日について

動物の愛護及び管理に関する法律が適応される期日については、ケージなどの設備を準備する期間をもうける、繁殖をリタイアした犬猫が行き場を失うことを防ぐため、段階的に適応されます。

・飼養設備の規模について

一部の規定をのぞいて、令和3年6月 1 日から施行されます。新規の事業者は令和3年6月から適用されますが、基準を満たすケージを準備する期間をもうけるため、既存の事業者については令和4年6月からと、1年間の猶予があります。

・従業員の数について

従業員1人に対する犬猫の頭数が制限されることで、行き場のない犬猫が遺棄されたり、殺処分されたりする恐れがあります。そこで、譲渡などを通じて、飼養する犬猫の頭数を徐々に減らせるように、5頭ずつ削減する期間がもうけられています。

完全施行は、新規事業者は令和3年6月。ブリーダーなどの第1種動物取扱業は、段階的に適用しながら、令和6年6月から完全施行となります。公立の動物園、動物愛護団体、ボランティア団体など、営利目的ではない第2種動物取扱業は、第1種動物取扱業からの譲渡が増えることが予想されます。そのため、完全に施行される時期は1年先の令和7年6月となりました。

・繁殖方法について

メスの交配年齢と出産回数については、以下の事項に関する体制を整えたうえで、令和4年6月から適用されます。

―マイクロチップの装着の義務化
―繁殖台帳への生涯出産回数の記入の義務化
―遵守状況を把握するための体制の整備

なお、1年に1回の健康診断や、出産時に帝王切開する際の取り決めは、令和3年6月から適用されています。

トップへ戻る